eラーニング本音でトーク その65
植松電機(北海道赤平市)専務であり、民間宇宙開発企業カムイスペースワークス(CSW)の代表取締役である「植松 努」氏の講演を聞き、深く考えさせられました。植松さんは、民間ベースでロケット開発などの宇宙に関する事業を営む傍ら、子供たちを会社に招待して、ロケット作りを体験させたり、ロケットエンジンの燃焼実験を見学させるなど、教育について高い関心を持っている方です。
講演は90分でしたが、密度は濃く、ふだんぬるま湯にいる大人たちをはっとさせる内容でした。
植松さんは、小学校の頃から学校の一般の勉強は今一つだったそうですが、飛行機が大好きで、独自に流体力学の勉強をしたり、精度の高い飛行機の模型を製作して過ごされたそうです。
中学校の進路相談で「飛行機やロケットの仕事がしたい」と言ったところ、「ばかじゃないの?お前の頭で出来るわけないだろう? というか、この町に生まれた段階で無理だわ」と進路の先生に言われたそうです。
しかし、その仕事に関わりたいという信念を曲げず、大学で機械工学を専攻して流体力学を学び、宇宙関連企業で飛行機やロケットの表面を流れる空気の様子の分析や画像化に携わったそうです。
そこで
「15年先をみた設計をせよ。相手と同じ土俵に乗るな。武人の蛮用に耐えよ」
という設計思想をたたき込まれ、現在のビジネス哲学の基盤となっているとのことでした。
その後、父親の会社をサポートするために、北海道赤平に戻り、特殊マグネットの開発を手がけ大成功を収めます。また子供の頃の夢が湧き上がってきます。
ある時、児童虐待の被害者が暮らす札幌近郊の施設を慰問したことが、植松さんに大きな転機を起こします。ここにいる以外にも同じような児童がたくさんいることにショックを受けます。
子供たちのために、社会のために、自分にできることは何なのか自問自答し、行動されています。子供たちを呼んで、ロケット教室を開催しているのもその一つです。
植松さんは、企業のあり方にも講演等を通じて苦言を述べています。
『企業は、「最終的な教育の場である」にも関わらず、不信を前提とした契約を結んだり、消費者がバカであること良しとして、金儲け主義のビジネスを展開している』と。
植松さんの会社の社員は、大卒は少数派で、ラーメン屋をやっていて転職してきた方などいろいろな人が働いており、言われなくても徹夜をしてしまうほど、好きなことに打ち込める人たちが集まっているそうです。
植松さんは、「10年後には、建設コスト1/10の建築システム、食費1/2、大学の授業料がゼロの社会を作っています。」とおっしゃっていました。今の経営者でそこまで考えている方はどれだけいらっしゃるでしょうか。
最後に印象に残った言葉を教えてくださいました。
それは、「CAN DO!」です。やれるという意ですが、これは「感動」とも読めると。
不可能そうに見えるものを無理といった瞬間に、思考は止まり何も起こらないとおっしゃっていました。
子供たちのために、そして社会に貢献できる会社をめざし、遠い宇宙を近くにしてしまう会社を経営する植松さんの姿勢はとても勉強になりました。
エスエイティーティー株式会社は植松さんの会社の足元にも及びませんが、教育に携わる企業である以上、志高くありたいと思います。