2007年04月16日

リアルとバーチャルのギャップ

eラーニング本音でトーク その53

リアルとバーチャルのギャップを考えるなんてナンセンス。リアルでないものがバーチャルであり、その逆も然りだからです。

eラーニングの導入は、リアル教育の一部をなんとかバーチャル教育で置き換えができないかという活動とも言えるでしょう。例えば、先生が直接生徒に、ホワイトボードやテキストを使って、身振り手振りを交えて熱弁するものを、いろいろなIT技術を使って、PCスクリーン上で展開する形にするという感じです。

eラーニング専門の会社にいながら、いやいるからこそ、このリアルからバーチャルへの変換の難しさをつくづく感じます。

2ケ月ほど、マレーシアの日本人学校に通う小中学校生に、算数、国語を教えてきました。他の案件の仕事があったのですが、お手伝いで担当しました。
私自身、高校での教師経験があり、教えること自体にそう抵抗もなく、むしろ教えるという熱意に燃えていました。授業準備をしっかりして、想定質問も考えて、ちょっとした小話も用意して臨みました。

しかし、最初は

「前の先生がよかった。面白かった。帰りたい。」

とぶつぶつ言って、なかなか授業にのってきません。自分が彼らとの距離を縮めようと、いろいろ質問したりすると、

「そんなのもしらないの?○○先生は何でも知ってたのに。」

という始末です。こんな関係では、どんなに一生懸命教えても、子供たちは、授業を理解してくれない、とちょっと自信をなくしました。

しかし、1ケ月目、2ケ月目と過ごすうちに、それぞれの子供たちの個性も見えてきて、子供たちも前の先生の印象が薄れたのか、だんだんとなついてきました。すると、自然に授業も思い通りに進むようになり、子供たちの表情もとてもよくなってきました。

最初のうち、手を抜いていた訳でもなく、また奇抜な工夫をした訳でもなく、子供たちとの信頼関係は少しずつ築かれていきました。上記の現象を可能にした理由のひとつが、「時間」であると考えます。もちろん、私の方で手を抜いていい加減に振舞っていたら、いつまでたっても、両者の関係はうまくいかなかったでしょう。

時間とともに相手のことを知り、相手も私のことがわかってきたからこそ、信頼関係が生まれたのだと思います。

さらにこの信頼関係の中で、安心感や安定感が生まれた結果、教育が成立したのだと認識しました。リアルな現象とは、一見非科学的、非効率的な中に真理があるものだとも思いました。

eラーニングシステム、eラーニング教材もこのことを無視すると、教育的効果は上がらないかもしれません。現在の無機質なeラーニングは受講者のことを何も知らず、時間がたっても、誰がどのくらいの時間勉強したか、何点取ったか程度しか理解することはできません。

Web2.0とか新しい概念や次々と生まれるIT業界ですが、結局は人の心に訴えかけるものでなければ、単なる技術屋の自己満足に終わってしまうでしょう。

技術的にはどう実現するか今は見当もつきませんが、受講者との信頼関係を時間とともに築くことができるeラーニングシステムこそが、完成の域に達したeラーニングシステムと言えるかもしれません。

posted by M.TOIDA at 17:42
連載:eラーニング本音でトーク | コメント(3) | トラックバック(0)
この記事へのコメント
樋田さん
こんにちは。お久しぶりです。
リアルとバーチャルの話、興味深いです。
私は、リアルとバーチャルはおっしゃるとおり、はっきり立て分けられるものだと思っております。
ただし、両者はどんどん近づいていくでしょう。
どちらかというとリアルはバーチャルに近づくことはないのでバーチャルがリアルに接近していくということでしょうか。リアルの多くのものはバーチャルに置き換え(実際は置き換えではなくコピーですが)が済んでおります。
最終的には人間が…と思っておりましたが、人間もアバターとして置き換えも進んでおり、そのアバターが何を出来るかが更に進んでいくものと思われます。
当然教育もその一つですが、別の方向から出てきたeラーニング等が、バーチャルな世界として無理やり入り込んでくるのか、eラーニングもバーチャルな教育の一つとしての現在の形状にてそのミッションを終え、バーチャル世界の中に真の仮想現実・シミュレーション的な教育が増えてくるのか、とても楽しみなところです。
Posted by 辻 賢一 at 2007年04月19日 17:55
辻さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

今日の日経新聞1面の「ネットと文明」の記事の中に、こんなくだりがありました。

--
「Wii(ウィー)は究極の接待マシンって呼ばれてます」
〜略〜
例えば祖父母は孫のために買う。贈るのではなく、自宅に孫を呼んで楽しませる”もてなし需要だ”
--- 2007年4月19日 日本経済新聞 朝刊より引用

リアルなおばあちゃん、おじいちゃんが、バーチャルな道具を上手に使いこなしていますね!

これから、リアル・バーチャル・コーディネイターなんていう人も現れたりしちゃうかもしれませんね!
Posted by M.TOIDA at 2007年04月19日 19:54
自分がリアルに住んでいるのか、バーチャルにすんでいるのかわからなくなってきている…
そんな人たちが増える世の中になりつつある今、リアル・バーチャル・コーディネイターなんて面白いですね。
新しいコンサルビジネスになるのかもしれませんね。
でも確かにそういったコーディネーターがいないと、えてしてバーチャルがリアルの逃避の場になりかねない。やはりリアルが中心で、バーチャルはそのリアルを更に活性化させるための場であるという地位を確立していかなければなりませんね。
Posted by 辻 賢一 at 2007年04月20日 14:15
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。