ちょっと考えるとビデオカメラを扱う仕事というものは楽しいもののようにも感じます。趣味でビデオカメラを保有している人も多いでしょうし、子持ちの方ならばわが子の成長の記録には必須アイテムでもあります。しかし仕事で使用するとなるとなかなか楽しい気分ではいられません。
どのような仕事でも、実際にそれを行う人と傍から見ている人では苦労の度合いや感じ方は異なります。ここではビデオカメラマンの視点で移動撮影におけるその疲労・心労について考えてみると同時にその仕事内容を洗い出してみましょう。
・肉体的な事項
撮影の種類にもよりますが、重い機械を運搬したり移動させたりすることはよくあります。撮影用機材はカメラ以外に三脚や照明機材、予備のバッテリーやケーブル等も必要です。そして撮影中はフォーカス、アイリスをはじめいろいろな細かい操作が必要です。そしてビデオカメラ撮影ではパンやズーム等の操作をゆっくり一定速度で動かすという日常生活ではあまり行わない動作が必要になります。さらに機材の移動から設置・撮影まであまり時間がないような場合は走ったりもします。このように、力の強い運動と繊細な操作を連続的にこなさなくてはならず体力を消耗します。
・精神的な事項
当たり前の話ですが撮影の目的は映像を記録することです。故に全てはそのために尽力するわけですが、これはカメラ操作に全力を注ぐということにはなりません。その理由は、基本的に小規模スタッフでの撮影ではいくつかの業務を兼任しなければいないことです。カメラ以外では音声・照明、さらには、撮影進行などを担当することもあります。色々なことを実施すれば各パートにおける集中力が散漫になってもきます。
そのような状況でも避けなければいけないミスは「録りこぼす」ことです。撮影順序の変更や時間の制限、テープのエラー、日没、単純な録画ボタンの押し忘れまで録りこぼしの危険は常に潜んでいます。結局は予定の通りに一つ一つ確実に撮影を進めていく以外にないのですが、まさにこれにが精神的な疲労に直結します。
また初めての場所で撮影を行うような場合には何が起こるか予想がつきませんし、その他にも想定外のこともおこります。
このように疲労・心労のもとを洗い出してみると、実はその半分以上がカメラ以外の理由によるところと言えます。eラーニング教材のような小規模の撮影でカメラをはじめ各パートに専任を置くことは難しいですが、撮影の成功のためにはできるだけ業務を分担できることが望ましく、また可能な限り余裕のあるスケジュールを立てたいものです。
これらのことは私の経験に基づいて挙げてみました。なお私が担当する場合、現場でOKを出すディレクター的な立場と機材操作者だけは兼任にならないよう、他のスタッフに協力をしてもらっています。