開発部だより 第57回
eラーニングと映像、前回に引き続きeラーニングで使用する映像を作成するために役に立つ知識・技術について紹介していきたいと思います。今回はPC動画に使われる音声について考えていきます。
例えば家庭用のビデオカメラで撮影を行えば、ほぼ必ずと言って良いほど音声も同時に録音されます。映像と音声は本来違う技術ですが、映像を取り扱う場合は通常音声とセットで考えなければいけません。
映像に対する音声の重要度は高く、教室で行う授業をビデオで録画してeラーニングコンテンツとして配信する場合は、映像よりも音声の方が大事である場合もあります。そうでなくても音声のない映像は長時間観続けるのはつらいものです。例えば稼動している機械を撮影した場合、録音されている音がその機械の出す騒音だけでもそれがなければ味気なく、あれば以外に退屈しないものです。
このように映像との組み合わせとして、とても重要な音声ですが、撮影の段階ではあまり重要と思われないことも多いようです。私もコンテンツの開発を行う中で映像の編集と同時に、音声について「もっと聴きやすいように加工してほしい」という要望をよく受けます。では、音声を上手に録るコツはあるのでしょうか?
これはとても難しい問題ですが、基本的には「雑音そのものを抑制する」か「マイクの位置や種類で工夫する」ことで対策を行います。
「雑音そのものを抑制する」とは、窓を閉めて環境音を遮断したり、エアコンを止めるなどして録音されそうな余計な音を締め出すことです。
こう言っては簡単ですが、実際のところ撮影が主目的でないものを録音する場合、例えば教室の授業を撮影するなどの場合に雑音を遮断するというのはほぼ不可能に近いことです。「窓を閉める」はともかく、受講者に咳をするなとか、椅子を引いたりして音を出すななど望んでも詮無いものです。
そこで、もうひとつの方法「マイクの位置や種類で工夫する」となるのですが、これはできるだけ録りたい音の近くにマイクをもっていき、録りたい音を雑音よりも圧倒的音量で録音することになります。ただこれにも多く問題が有ります。先ほどと同じ教室の授業の場合、講師の声を録音するとしてピンマイクを装着してもらうのか、2名以上話をする人がいればそれだけのマイクを用意するのか、その他の受講者が意見を言うような場合はどうするのかなどです。
これだけの話でも音声をきれいに録音することは難しいことであると理解いただけると思います。もちろん撮影を生業としている業者ならマイクや音声ミクサーなど必要な機材を持っていますし扱いも心得ています。ですが、そのような外部の人間にお願いするほどの予算がない場合等は、内部の人間が家庭用ビデオカメラで録るしかないことも多いと思います。
基本的には、ビデオカメラ1台で手軽な分だけ音声の質を犠牲にするか、あるいは外付けのマイク等を用意して手間のかかる分だけきれいな音で取れるように努力するのかです。実際のところは予算と手間とクオリティを秤にかけて最適なやり方を選ぶしかなく、手軽で簡単、高クオリティとはいかず悩みどころです。
なおビデオ編集では、PCベースのシステムを使用することにより音声レベルの調整やBGMの挿入など、以前に比べ手間を少なく良質な仕上げができるようになりました。さらに音声の編集用ソフトでは雑音とされる波形パターンを分析して除去できるようなものもあります。現場で質の良い録音を行うことを考えるのももちろん重要ですが、実際にコンテンツになったときのものを考え、編集や制作全体を考えたバランス感覚を持つこともカメラ(録音)を任された者には必要なことなのでしょう。
次回も引き続き、音声についてに考えていきます。